GALLERY 301 due
筧 有子 個展
PREMIUM & GERDEN
2015.10.16 ~ 10.26
この展覧会では、庭をテーマにしたフォトコラージュを展示している。学生時代に日本画を習得した私にとって自然は制作テーマの基礎になっているものであるが、東日本大震災や昨今の自然災害によって、この国では自然やそれとの共存は改めて今日的で身近なテーマとなっていると実感している。
私のアトリエは5年前から、関西圏や首都圏ではなく、ある典型的な地方中核都市の中心駅からバスで20分、そこから徒歩7分の約30年前に造成された住宅地の中にある。バス停の前には、中学校とコンビニと小さなラーメン店、TSUTAYA とブックオフ 、公民館がある。アトリエを出て気分転換するときには、公民館のおばあちゃんたちを窓越しに眺め、幼稚園 の園児の声を聞き、川でこうら干しをする亀を見てコンビニに行くのがいつものルートだ。TSUTAYA は1年前に 校外の大型店に移転したので、現在この徒歩圏で文化的情報を受容できる施設はブックオフだけになっている。 作品は、このブックオフで仕入れた中古雑誌の写真を切り抜くことから始まっている。切り抜かれたバーチャルな植物たちとその周辺に写っているものたちは、絵画制作の合間に眺める雑誌の趣味や癒しであったが、次第にその写真そのものが作家の前でにぎやかにおしゃべりし始めて作品になりたがり、集積して一つの形になった。 雑誌は最初、いつも新書で購入していた種類のものが多かったが、定価1000円程度の新書では手が届かないラグジュアリーな顧客層を想定した雑誌も購入するようになった。そのような雑誌の比較的新しい号が 108円で陳列されていると、価値あるものを手頃な価格で買うことに喜びを覚える関西人としては見逃す訳にはいかない ! 写真に写った風景や植物たちは、それぞれの雑誌を飛び出し、私がアクリル絵の具で手を加えることで、この世に存在しない”プレミアムな” 庭を作ってくれる。 知人からは「筧サンこの作品つくるの楽しんでそう~」とのコメントを頂いた。確かに楽しい。最近の私の制 作モットーは「制作の根源には制作者自身の楽しみが必要」で、その点でこのシリーズは自分にとって意味がある。 ただ、制作と平行して調べていく中で、安価に手に入れることができる現代の産物として雑誌の写真「素材」を享受するということの裏側に「フォトコラージュ(フォトモンタージュ)」と新古書店「ブックオフ」に関連した 二つの今日的課題を持つ事が明らかになって来た。 この展覧会は、まず、純粋にその写真とコラージュを楽しんでもらいたいということと、アートという文化を創造することと著作権や肖像権の問題が、フォトコラージュという形態の作品を日本で発表しにくくしていることや、この様な高い印刷 / 写真技術を使用した写真群が街の片隅の古書店でその価値を認められることなく眠っていく現実について考える契機として頂ければ幸いに感じている。 |
筧 有子
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