GALLERY 301
山野 実優 個展
陶磁器のある生活
2023.5.19 ~ 5.29
- Statement -制作のテーマのひとつとして、「作品を作ることで、良い人生をつくる」というものを掲げています。展示会やイベントなどに出向いて作家が制作した作品を鑑賞する、購入する、という機会を経験しないまま終わることが大多数ではないでしょうか。
忙しくまわり続ける現代社会において、芸術に目を向けてみるということは、時間が無い社会人とって、思っているよりも難しいことです。しかし、そう言った人達にこそ、芸術に触れる機会を作るべきだと常々考えています。 スーパーで買った惣菜をそのまま食べず、お気に入りの食器に移して食べる、気に入った器で植物を育ててみるなど、余裕が無い人には出来ません。逆に言えば、忙しく生きる人にもそう言った心や身体の余裕を作ってくれるものが芸術と言えるのではないでしょうか。 余裕のなさは、自身だけでなく、まわりの人間も磨耗させ、疲弊していきます。その為、自身が余裕を持って生きることで、周りの人達にも余裕ができ、結果的に良い人生となるのではないでしょうか。 芸術に触れる生活、陶磁器のある生活は、いつもと同じ時間を少しだけ特別にします。作品づくりを通して、ひと時の休息を与えられるような、また展示を通してそういったことを考えてみる機会をつくれたらと思っています。 - Review -山野実優の陶芸作品は、釉薬の下の繊細な彫りと色彩がまるですりガラスを隔てたように淡く透けて見えるのが特徴だ。微細な気泡が多く発生する釉薬をかけて焼成し、研磨して仕上げるという独自の技法によって作られている。ラインナップとしては、以前から手掛けている一輪挿しや多肉植物の鉢、小物入れに、本展では平皿や小鉢といった食器類が加わった。いずれも華美なところのないささやかな小品であるが、花や葉が密集した模様は生命力を感じさせる。作品に花をいけたり食事をとったりする行為も英気を養うことに他ならない。多忙な毎日に芸術と安らぎをもたらしたいという山野の思いが込められた作品は暮らしのなかに溶け込み、心とからだの調子を上向かせてくれるだろう。
美術ライター 大瀬友美 山野 実優 Miyu YAMANO山野実優 Yamano Miyuu
1997年 兵庫県神戸市出身 2019年 神戸芸術工科大学芸術工芸部アート・クラフト学科 卒業 2021年 神戸芸術工科大学大学院芸術工学研究科修士課程 修了 |