GALLERY 301
山下和也 個展
うつしあう世界
2023.9.15 ~ 9.25
- Statement -日本画、書画の材料・技法と日本の歴史、文化、思想を顧みながら、伝統芸術と現代芸術を捉えなおすことを主眼に活動する。 日常の実感や体験(自己、今)と古典の世界(他者、過去)を接続しながら、見ること、かくこと、思索することを通じて、具 象と抽象と現象を行き来する作品、体験をつくりだすことを試みている。
- Review -15世紀に記された1枚のグレゴリオ聖歌の楽譜から始まる本展は、意外にも西洋の宗教的権威を感じさせるものではない。むしろ時代や洋の東西が異なる表現を渡り歩き、見出される普遍性や新たに生じてくる表現を汲み上げようとするトランスカルチュラルな姿勢が見てとれる。
空気や水の揺らぎを表現した抽象画は短いタッチの集積が特徴で、印象派の筆触分割に似ている。しかし使われているのは東洋の紙、墨、胡粉であり、印象派のようにカラフルではない。代わりに紙の皺やたわみ、墨の滲み、光の反射や透過といった素材の特性を生かした工夫が凝らされ、自然光のもとで日ごと異なる視覚効果が生まれることが狙われている。 同じ楽譜を繰り返しフロッタージュしたシリーズは1枚ごとに手つきが違い、アウトプットに個性がある。それは何人もの信者がひとつの歌を歌い継いできたことを表現しているように見える一方で、手の動きを追跡できる筆致はアクション・ペインティング的で、山下和也という行為者の存在を印象づけもする。 なお、グレゴリオ聖歌は五線譜が生まれる前の「ネウマ譜」と呼ばれる様式で記される。四角い記号はデュシャンのフランス窓に、4本の線は神戸のギャラリーの窓から見える電線に重なり、異なる時空を繋ぐワームホールとなる。 美術ライター 大瀬友美 山下和也 Kazuya YAMASHITA1978年 大阪生まれ、神戸市塩屋在住
2002年 京都嵯峨芸術大学専攻科二次元表現コース古画研究工房修了 2003年 京都嵯峨芸術大学附属芸術文化研究所 研究生 2003~2016年まで国宝修理装潢師連盟、(株)坂田墨珠堂にて文化財修復に従事 2017年~2022年 国宝修理装潢師連盟外部技術登録者(専門:東洋絵画) 2017年~SunSui.設立 神戸に移住、KOBE STUDIO Y3(オープンスタジオ)に参加 2019年~2022年 京都芸術大学美術工芸学科基礎美術コース非常勤講師 現在、民族藝術学会会員、C.A.P.(芸術と計画会議)メンバー 近年の主な展覧会歴 2023年 芸術祭「六甲ミーツ・アート芸術散歩2023beyond」(六甲山福祉センター/兵庫)*C.A.P.メンバーとして参加 プロジェクト「これは富士山である登拝篇・遥拝篇」(富士山ほか)*パラレルモダンワークショップによる活動 グループ展「30-40」(KOBE STUDIO Y3 /兵庫)*浅山美由紀賞 2022年 個展「すべてはつながりの中で変化している」(Gallery301/兵庫)*トークイベント:尺戸智佳子(黒部市美術館) グループ展「都美セレクショングループ展2022『たえて日本画のなかりせば‐東京都美術館篇』」(東京都美術館/東京) 2021年 個展「あいまに海を眺めている」(KOBE STUDIO Y3 /兵庫)*展覧会記録トーク配信:作花麻帆(西宮市大谷記念美術館) 芸術祭「六甲ミーツ・アート芸術散歩2021」(六甲スカイヴィラ迎賓館/兵庫) *C.A.P.メンバーとして参加 グループ展「See SawSeeds展~GalerieHerold+Videokaffe+C.A.P.による展覧会」(KOBESTUDIOY3/兵庫) プロジェクト「たえて日本画のなかりせば-上野恩賜公園編」(上野恩賜公園/東京) プロジェクト「ENDLESS HORIZON」(ブレーメン芸術大学/ドイツ) 2020年 芸術祭「六甲ミーツ・アート芸術散歩2020」(六甲スカイヴィラ迎賓館/兵庫)*C.A.P.メンバーとして参加 プロジェクト「meets@post」(GalleryPARC/京都) グループ展「バインド!」(KOBE STUDIO Y3 /兵庫)*「絵画のひみつ/三つのアリア」を企画・展示 2019年 個展「私たちbehindourperspective」(GalleryPARC/京都)*トークイベント:はがみちこ(アート・メディエーター) 個展「うつろう光、しずかな影」(LightsGallery/愛知)*第一期、第二期で作品すべて入れ替え グループ展「アーティスロングの魔法」(GalleryARTISLONG/京都) 2018年グループ展「See SawSeasEffect“MoiMoiKonnichiwa”」(Titanikgallery/トゥルク,フィンランド) アートフェア「UNKNOWN ASIA 2018」(ハービス大阪/大阪) グループ展「日本水墨画大賞展2018」(尼信会館/兵庫)*推薦者/村田隆志(大阪国際大学教授) 2017年 個展「水墨画-淡墨と余白の美」(無印良品グランフロント大阪店/大阪) アートフェア「ART FAIR ASIA FUKUOKA 2017」(ホテルオークラ福岡/福岡) 2016年 個展「松風」(雅景錐/京都) アートフェア「ART OSAKA 2016@PARK HOTEL」(PARK HOTEL/東京) グループ展「感錐2016」(アートスペース感/京都) 2015年 個展「松風」(雅景錐/東京/京都) グループ展「速度の表面」(雅景錐/東京) アートフェア「ART OSAKA 2015」(ホテルグランヴィア大阪/大阪) アーテイスト・イン・レジデンス 2021年 C.A.P.クレイスタジオ アーテイスト・イン・レジデンス(KOBE STUDIO Y3 別館/兵庫) 2018年 See SawSeas Effect “Moi Moi Konnichiwa”(ARTE ry/トゥルク,フィンランド) 受賞・助成 2020年 文化芸術活動の継続支援事業B(文化庁)*第2次、第3次採択 頑張るアーティストチャレンジ事業(神戸市文化振興財団) 2019年 神戸文化支援基金助成(神戸文化支援基金) 2018年 UNKNOWN ASI A 2018 Re viewer Pri ze / 鈴木結加里賞、松尾惠賞 、日本水墨画大賞展2018 サントリー賞 出版 ・執筆 2023年 論文(報告)「破墨プロジェクトの活動2018-2020」『民族藝術学会誌a rts /』 2020年 出版 「破墨プロジェクト」(発行人:山下和也、編集:櫻井拓、デザイン・印刷設計:芝野健太) 破墨プロジェクト 2018年結成。日本画家の山下和也、俳優・神楽舞手の髙安美帆、ファッションデザイナーの隅野由征、美術家の柴山水咲、山村 祥子の5名を中心に、8世紀の中国で行なわれていた、現在でいう「アクション」や「パフォーマンス」を横断する墨を用いた芸 術表現である「破墨」についての考察する事を起点に、異分野共同による領域横断的な活動を展開している。主にレクチャー、 ワークショップを中心としたStudyシリーズ、共同による方法としてのパフォーマンス、展覧会の3つを軸に活動する。 youtube: https://www.youtube.com/results?search_query=haboku+project+ |